2023.4.26(水)
四谷道場稽古
少年部17時30分〜19時
17時に幼年部が元気に稽古を終えて、皆帰って行きます。
入れ替わりで少年部稽古です。
続々と少年拳士達が集まって来ます。
その中には今日最後の稽古となる子が。
いつも通り「押忍！」と元気いっぱいで道場にやって来ました。
入門した時は５歳で、今年４月から２年生に。
入門して約３年が経ちますが、ここ一年は道場にくれば何かと私に話しかけてくれます。
それまでの約２年は海外から来たばかりで日本語が理解できず、言葉でのコミニケーションが取れませんでした。
稽古は動作で示す事により、見よう見まねで覚えていきましたが、道場の皆んなの輪に入れない様子。
先輩達も仲良くしようと誘いますが、1人ポツンとしていることも多々ありました。
5歳の子が言葉もわからず基本稽古や型稽古が楽しいはずがありません。
それでも人一倍ヤンチャな分、稽古中道場内を遊び回る事もしばしば。
どうやったら良いのかと随分頭を悩めました。
それでも稽古には必ず出席して、稽古を休んだ記憶はほとんどありません。
１年、２年と経ち日本語を理解して、子供同士コミニケーションが取れるようになると、悪戯もすっかり無くなり、持ち前の明るさでいつの間にか皆んなの中心にいるようになっていました。
稽古も随分と進んで道場内でとても楽しそうにしています。
私も彼の覚えたての言葉で会話を楽しんでいました。
それも今日で最後です。
少年部の皆んなも今日が最後と知っており、稽古が終わると記念写真を撮ろうとなりました。
先輩後輩に囲まれてとても楽しそうです。
撮影も終わり、お別れの時間が近づいてきます。
皆んな「どこに行くの」「また帰って来るの」と名残惜しそうです。
本人はいつもと変わらぬ様子で「どこどこ」「何年したら帰ってくる」と答えています。
私も「どこどこでも空手続けるんだよ」といつものトーンで話しかけると、彼は「押忍！」と元気に返事をしてくれます。
皆んなを集め、「彼も空手頑張ると言ってるから、皆んなも負けないように、お互い頑張るんだぞ」
私も寂しい気持ちがありますが、明るく振る舞い、次の生活に進もうとしている子供に、そんな気持ちを伝えても仕方ありません。
彼には「帰って来たらまた一緒に稽古しような」と最後の言葉。
帰り際も覚えたての言葉で、子供同士で明るくお喋りをしている姿は、新しい生活を楽しみにしている姿に見えました。
そんな彼が皆んなとの別れの挨拶も終えて、道場を出る為の一礼をした時。
一瞬ふっと俯き寂しそうな顔を見せました。
その表情にはじめて「あっ！しまった、この子の本心を見誤った」と気付きました。
このまま帰してはいけない。
階段に向かい帰ろうとしているのを呼び戻しました。
その時には俯き、何か堪えている顔をしています。
その顔に両手を当てて「今までよく頑張ったな。どこどこ行っても元気でいるんだぞ！」と言うと。
「押忍」と言いながら大粒の涙がこぼれはじめました。
最後まで明るく振る舞い、堪え続けた末の涙です。
小学２年生の真心に心打たれました。
言葉のわからない時から、稽古の厳しさにも負けずに通い続けた道場です。
先輩後輩もたくさんできました。
子供ながらに空手に対する自信も、誇りも芽生えているのだと思います。
色々な想いの詰まった本物の涙。
最後に本心を見せてもらい、受け止めることができました。
道場に想いを寄せてくれてありがとう。
言葉が分からないでキョロキョロしていた３年前。
悪戯を叱ったこともありました。
色々なことが思い出されますが、今日で暫くの別れです。
この先空手道を歩むのか、他の道に進むかはわかりませんが、何でも一生懸命に。
君が歩む先々が幸せで満ちていることを願っています。
また道場で会えれば嬉しいです。
押忍。
✏️師範杉村。
